真面目な信長像

金子拓 織田信長〈天下人〉の実像

金子拓さんの、織田信長〈天下人〉の実像を読みました。

織田信長というと、過去の小説やドラマで描かれてきた姿から、戦国の革命児という印象が強くて、定着してるが、ここでは、違った姿の織田信長を見ることができます。

軍事の面では、確かに決断が早くて、勇気のある行動が見られて、過去のしがらみに囚われず、自ら切り開いて結果を出していく人だと思うが、政治の面では、必ずしもそうではなかったようだ。

天下というのは、信長の頃は、日本全国という意味ではなく、室町幕府が支配していた畿内とその周辺のことを指すそうで、信長は、それまでの室町将軍と将軍の擁護者がそうしていたと同じように、そのエリアの静謐を守るために奔走していました。

そこには、天下の静謐を守るためには、将軍や天皇の行いが道理に合わない場合は、苦言を呈すことも厭わない、とても真面目な姿が見えます。そういう姿勢が、とる人によっては、朝廷と対立していたと誤解されたのではないか、ということも書かれてます。

全国統一を果たした豊臣秀吉や、江戸に幕府を開いた徳川家康のような姿の先駆的な存在というよりは、室町幕府の延長線上で生真面目に奔走する、中世の香りがまだ残る信長像です。

こういう信長像は新鮮でしたが、とても納得感があり、受け入れられました。軍事面の信長像と、政治面の信長像は、分けて考えるべきと気付かされました。

こうやって、いろんな歴史の見方を知ることは、とても刺激になります。

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